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    「幕恋-沖田総司-」
    除夜の雪

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    2.

     それにしても、この人は誰だろう。
     初めて会った人なのに、知っている気がする。
     わたしが屯所に来たときも、ずっと、この屯所で、みんなと暮らしてた気がする。

     にこにこと笑顔を絶やすことなく、まるでわたしが寂しくないようにと、その人は色んな話をしてくれた。

    「あれ?羽織の袖のところ、破けてますよ?」
     わたしはふと気になって、彼に告げた。
     左の袖の底の部分がほつれて、穴が開いている。
    「ああ、これね。腕を組むと、ほら」
     彼は両手を組んで袖に手を入れると、穴のところから右手の指を出して、ひょこひょこと動かして見せる。
    「ああ、ダメですよ。そんなことしちゃ穴が広がっちゃいますよ。貸してください」
     わたしは、ちょっと強引に羽織を受け取って、穴のところを繕い始めた。
    「おや。ありがたいなぁ。前にもこうなったのを放っておいたら、財布を落とすほど穴が広がってしまってねえ。あの時ばかりは落ち込んだなあ……ははは」
     はははって……笑い事じゃないような。
     ものすごく上品そうな物腰の柔らかい人なのに、意外と無頓着なのかなあ…

     袖を繕っている間、彼はそばにあった本に目をやった。
    「これは?」
    「ああ、それ。総司く……沖田さんがひとりで留守番してると退屈だろうって、貸してくれたんです」
    「ぷっ…。豊玉発句集……なるほどね」
     ぱらぱらとそれをめくりながら、彼は笑う。
     そんなに面白いこと書いてあるのかな……。
     それから彼は、総司くんが持ってきた『ほっくしゅう』を読み始め、わたしは繕い物を続けた。

     しんしんと、雪は降り続け、辺りの音も吸い込んでいく。
     屯所はお寺の敷地内にあるのに、除夜の鐘の音も雪に吸い込まれてずいぶんと遠くに聞こえる。
     『ほっくしゅう』を読み終えたのか、彼は本を閉じてこちらを見た。
    「そうか。こんなに健気な娘さんがついているなら、総司も安心だね」
     ちょ……いきなり、何? わたし、総司くんのこと何も云ってないのに……。
     なんか、恥ずかしい……

    「は、はいっ!出来ましたよ。今度は破かないでくださいね」
     照れ隠しに、羽織を押し付ける。

     その時、ばたんと入り口が開いて平助くんが戻ってきた。

    「あ、平助くんお帰り。随分、はやかったんだね」
    「ただいま……って、それどころじゃねえんだ。総司が、具合悪くなっちまって」
     慌てた様子で、平助くんは私の両肩を掴んだ。
    「えっ、総司くん、倒れたの?」
     朝も少し咳き込んでたけど、休むわけに行かないからって、総司くんは見廻りに出たんだけど……どうしよう。

    「あっ、あっ! そんな心配そうな顔すんな。倒れたってほどじゃねえ。ただ、咳が酷いって一番隊のやつらが知らせにきて…そういや、朝から風邪気味っぽかったよな」
     わたしの顔色を見た平助くんが、慌てて私を安心させようとする。
    「本人は、たいしたことないから巡察続けるって聞かないんだけど、今、サノさんがひっぱってくるから。俺は先にあいつの部屋温めて布団用意しとく。あんたは、薬と、なんか温かいもの用意してやってくれ」
     それだけ告げると、平助くんはお客様には気付かないまま、母屋の方へ走って行った。
     平助くんや、他の隊士のほとんどの人は、総司くんの病気のことを詳しく聞かされてない……。






    3.

    「大変。どうしよう」
     とにかく、平助くんに云われたことしなくちゃ……お薬は、総司くんのお部屋にあるから、あとはお水と、えっと……。
     どうしよう。落ち着かないといけないのに、色んなことが不安で落ち着けない。
    「葛湯。だったら大丈夫かな」
     少し動転した気持ちが、その声ですぅっと落ち着いた。
    「そうか、葛湯だったら、食欲なくても食べれますね」

    「右の棚の奥の方に、薄い木の箱があるから、それを出して」
     にこやかだった彼の表情が急に真剣な顔つきになった。
    「は、はい」
     云われたとおりの場所から箱を出すと、彼はそこから干した木の根っこのようなものを出して細かく刻み始める。
     調理場においてある道具の全てを把握しているみたいで、彼はてきぱきとその作業をこなしていった。
    「葛根と甘草だよ。これを、薬缶に入れて煎じたお湯で、葛湯をつくってやるといい。普通の葛湯よりも喉には効くよ」
    「あ、ありがとうございます……」

     本当に、この人は誰なんだろう。
     名前を聞けばいいのに、どうしても『あなたは誰ですか』と聞けない。

    「大丈夫だからね。総司は、強いから。君がいてくれるなら、大丈夫だから」
     その人は、まだ不安で震えるわたしの頭を、何度も何度も撫でてくれた。

     労咳は、不治の病だといわれてる。この時代には治す方法がないって聞かされた。
     だけど、何処かに治す方法はあるって、わたしは信じてる。
     わたしがこの時代に迷い込んでしまうくらいの不思議なことが起こるんだもの。

     彼に頭を撫でてもらっていると、不安でいっぱいだった気持ちが、すぅっと消えていくのが分かった。
     そう、まるで、雪に吸い込まれるみたいに。

    「さて、雪も止んだようだ。私はそろそろ戻るとしよう。未夜ちゃん…だったかな。すまないが提灯を貸して貰えるかい」
    「でも、総司くんに用事があったんじゃ……」
    「うん、彼の具合が良くなったらね」
     にっこりと笑った彼のまわりだけ、何故か春の陽だまりのように暖かく思えた。
     提灯を渡して、彼が戻っていくのと入れ替わりに、総司くんがサノさんにおぶわれて戻ってきた。

    「もおー。サノさんてば、降ろしてくださいよぅ。ちょっと咳き込んだだけですって!」
     思ったより元気そうな声が聞こえてほっとする。
    「うっせー! お前が倒れたら、未夜が泣くだろうがっ! こんな日くらいは休んどけ!」
     サノさんの大きな声だけは、雪に吸い込まれずによく聞こえた。
     ……ちょっと、それ、恥ずかしいんですけど。

    「……だから、降ろしてくださいってばー。ひとりで歩けますって。こんなところ未夜に見られたら……って、もう見られちゃってるじゃないですかーっ!」
     入り口(と、サノさんの背中)を挟んで、総司くんと目が合う。

    「お、おかえり……」
    「た、ただいま……」
     
     なんとなく気まずくて、お互い顔が真っ赤になった。

    「はいはい、ただいまっと! 未夜、総司に薬と、なんかあったかいもんやってくれ」
    「あ、はい。用意できてるよ。サノさんも甘酒があるから温まってくださいね」
    「お、ありがたいねえ。さすが姉御。いいなあ、俺もこんな嫁欲しいなー」
    「ちょ…サノさん! ま、まだ嫁じゃないです」
    「はいはい、『まだ』ね……」

     わたしがサノさんにからかわれている間、総司くんは不思議そうに湯呑を見つめていた。
    「未夜……これ」
    「葛湯…だけど、不味かった?」
     ちょっと不安になって訊ねる。
    「いや、美味しいよ。そうじゃなくて、懐かしい味がしたから」
    「ああ、それなら、さっき、お客様が……」
     わたしはさっきまでここにいたお客様の話をした。

    「そこの棚からカッコンを出してくれて、これが喉に効くからって」
    「山南、さん……」
     総司くんと、サノさんが、同時に呟いた。



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