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    「幕恋-沖田総司-」
    咲くや我が花、山の南に

    咲くや我が花、山の南に-1-

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    1.

     早い場所では桜が咲きはじめようかという頃なのに、屯所の中はやけに冷え切っていた。
     その日、屯所に山南さんの姿はなかった。

    「総司、行ってくれるか」
     土方さんの静かな口調が、いつになく重く、屯所内に響く。
    「あまり……指令には聞こえませんね、副長」
    「総司、くち」
    「はい、閉じます。……副長」

     ―――随分と、感傷的ですね、土方さん。
     隊務中はいつだって、僕たちのことを名前で呼んだりしないじゃないですか。

     そんな事を口に出そうものなら、拳で殴られてしまうだろうな。
     困ったな。この場を和ませる軽口が、ひとつも見つからない。


    「辛い役を押し付けてすまないな」
     旅支度を始めた僕に、近藤さんが声をかけてくれた。
    「―――身体は、大丈夫か」
    「ええ、この数日は咳も出ませんし。だから……追いつきますよ」
     僕の『身体』の事を知っているのは、極一部の幹部の人たちだけだ。
     池田屋に斬り込んだ連中でさえ、あの時僕が倒れたのは、ただの暑気あたりだと思っている。

    「無理は、しなくていいんだぞ。具合が悪くなったら、体調を優先しろ」
     
     大丈夫。分かってますよ、近藤さん。それに、屯所の皆。
     僕に課せられた仕事は、山南さんを連れ帰ること。

     どうして、僕に……その理由も分かってる。

     誰も、口に出せない、もうひとつの指令……いや、望み。かな。
      
      
    《出来れば……何もなかったことに……》

     誰もが、そんな顔をしていた。
     いや、全員じゃないな。
     歳さん……土方さんは、どう思っているんだろう。

     新撰組からの脱走を企てた山南敬助の捕縛。
     これが、僕に課せられた仕事。

    「必ず、山南をとっ捕まえてこい」
     そう云って、僕を追手に指名したのは土方さんだ。
     どうして、僕が……
     そう思った次の瞬間。僕の口は、勝手に動いた。

    「……承知」

     あの時、僕は何を思ったんだろう。


    「総司、馬は用意しなくていいのか」
     見送りに来た土方さんの声は、まだ何処か空ろだ。
    「まだ、それ程離れてないと思いますし。その方が……」
     逃亡者を追うのに、馬を使う方が早いのは誰にでも分かることだ。

    「その方が、費用もかかりませんし」
     出来るだけにっこりと、冗談めかして答える。
    「そんなもん、お前が稽古で怪我させた平隊士の治療代にもならねえよっ!」
     原田さんが答えてくれて、ようやく少し、皆が笑った。

    「では、行って参ります」
     屯所の門前で、複雑な表情で見送ってくれる皆を振り返り、僕は一礼して、旅路についた。

     僕は、どうすればいいんだろう。
     僕は、どうしたいんだろう……。

     山南さん。
     本当の兄上のように……それ以上に、僕は――――――






    2.

     もう少しで、大津へ着こうかという道で、休憩をとる。
     
     足の重い旅の途中のこの細い道で、いつの間にか足元に、一匹の黒い猫がいた。
     僕と目が合っても逃げようとはせず、じっと、こちらを見返してくる。
     それほど人懐こいとはいえないけれど、野良というわけでもなさそうな、綺麗な毛並みの猫。

    「君、誰かのうちの子かい?」
     この辺りには人は住んでいなさそうだけれど、と思って周囲を見回す。

    「そうだ、君。お腹空いてない? ……君が食べれそうなもの、持ってたかなぁ」
     途中で買った饅頭を半分に割って、片方を猫に差し出してみた。
     くんくんと鼻を近づけてはきたけれど、ぷいと横を向く。
    「はは。やっぱりお気に召さないか。美味しいんだよ、このお饅頭」

     僕が食べている間も、猫はずっと傍を離れようとしなかった。
    「そろそろ、行かないと……ね」
     僕が歩き始めると、猫も一緒についてきた。
     いや、ついて来るというよりは、まるで道案内をするように、僕の数歩先をついと歩き続ける。
     試しに、立ち止まってみると、猫も立ち止まって振り返る。
    「驚いたな……。君、僕の行き先がわかるのかい?」
     ……といっても、ここは里へと続く一本道なんだけれど。


     幾らも歩かないうちに、猫は急に足を速め、姿が見えなくなった。
     飼い主でもいたのだろうと思い、それほど気にもせず歩き続ける。
     思ったとおり、行く手には猫を抱き上げる人影があった。

    「おかえり。《明里》。何処かへ行ってしまったのかと思ったよ」
     優しい声をかけて黒猫を抱き上げたのは、僕が探しているその人だった。

     ―――すみません、近藤さん。『彼を見つけられずに帰る』方法は取れなくなりました……。

    「山南さん……」
     呆然と呟いた声に、彼は振り向いて僕を見た。
    「やあ、」
     山南さんは僕の姿を見ても驚きもせず、黒猫に向けたのと同じ笑顔で笑いかけてくれた。

    「どうして……、どうして、こんなところにいるんですか」
     彼を追ってきたはずなのに、なんだか頓珍漢なことを口走ってしまった。
     決まりが悪くて、俯いた。
     違うな……彼の顔を見る勇気がなかったんだ。

    「そろそろ、誰かが来るんじゃないかと思って、待っていたんだ」
     にっこりと微笑む山南さんに、逃亡者の焦りや後ろめたさなど微塵も感じられない。
    「君が、来てくれると思っていた。君でよかった……総司」

     山南さんは、脱走者なんかじゃない。
     少し、遠出に来ただけだ。
     彼の置手紙を見て、誰かが必死でそう訴えていたっけ。

     目の前の山南さんの落ち着きぶりを見ると、本当にそう思えてくる。
    「……帰りましょう。山南さん。今なら、間に合う。何もなかったことにしましょう」
    「とにかく、ここではなんだ。腰を落ち着けて話さないかい」
     山南さんは、くいくいと杯を傾ける仕草を見せて僕に笑いかけた。
     まるで、二人旅の途中で遅れた僕を待っていてくれたような、そんな笑顔で。


    《続く》
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