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    5. 

     不思議に充実した気分だった。
     カンの鋭いところが鼻につく、生意気極まりないこの小僧と、甘味の話で盛り上がるとは。
    「さすがは橙糖珠になる金柑ですね。この透き通った鼈甲の色、どうやって出すんだろう」
    「つける蜜の色が決め手なのだろうが、この調合はさすがにわからんな」
     大の男ふたりが、小さな壷に入った菓子を挟んで、その出来映えを褒める。
     こんな光景を、例えば坂本君たちにでも見られたら……私の威厳は彼らに通用しなくなるやも知れぬ。
    「……ああ、このお茶、美味しいですね。この蜜漬けや干菓子なんかにはこれくらい渋いお茶がいいですよね」
     一口茶を啜って、沖田は満足げに微笑んだ。
     その一言が、私の機嫌をますます盛り上げる。
    「そうか、君にも分かるか。この茶のすばらしさが」

    「それにしても、道端で人に菓子を勧めるとは。どこぞの国の王族を思い出したぞ」
    「おう……ぞく?」
     蜜漬けの金柑を口に入れながら、沖田がきょとんと私を見る。
    「うむ。彼らが、ご婦人を口説く時に使ったという甘味があってな。蜜漬けの礼にみせてやろう」
     女中に言いつけて、その品を持ってこさせる。
     それは、数日前、わが藩の取引で外国から取り寄せた『ボンボン』という甘味だった。
     甘味の知識に関しては、彼に遅れを取りたくないという、いささか子供じみた負けん気が起きたこともある。
     さすがの小僧も、これはまだ見たことがないだろう。
     
     切子細工のギヤマンの器に盛られた、半透明のまるい粒に、彼は予想通り釘付けになった。
    「金平糖……とは、少し違いますね。あ、なかに何か入ってる……?」
    「ボンボンといってな。外国の菓子だ」
    「へぇ……やっぱり薩摩藩は、珍しいものがありますね」

    「これを、綺麗に飾った小さな箱に入れて散歩に持ち歩くのだそうだ。そして、気に入った女子を見かけるとな」
     私は器を手のひらに乗せ、沖田の目の前に差し出す。
    「『おひとつ、いかがかな?』……と、やると、大抵の女子はころりとついて来る……というわけだ」
    「なるほど……さっきの僕が、その手口で大久保様に言い寄った……と、」

     沖田は楽しげに笑って、私が差し出した器に手を伸ばし、白いボンボンを手にとった。
    「きれいですね。こんな可愛らしい甘味を出されたら、確かに女の人は喜びそうだ」
     光にかざしたり、つついたり。悉く予想通りの反応をする。

    「食べてしまうのはもったいないみたいだ」
     関心したように、いつまでもボンボンを眺める沖田に、ひとつ忠告する。
    「だからといって、少しづつ齧ろうとしてはいかんぞ。それは一気に口の中へ入れ込め。中に蜜が入っている」
    「へぇ……面白いな」
     興味津々の様子で、沖田はボンボンを口へ放り込んだ。
    「あ……、これ」
     驚いて目を瞠るその様子に、私は満足だった。





    6.

    「美味しい……ですが、不思議な蜜ですね。喉が熱い……」
     そうだ、その反応を見たかったのだ。
     愉快な気持ちを隠しきれず、私は告げる。
    「その蜜には酒を使っているからな」
    「酒、ですか……」
     酒ときいて、心なしか、その顔色が曇る。

    「どうした、まさか酒が呑めなかったか」
    「いえ、そんなわけではないです。嗜む程度には呑めますよ。ただ、最近、土方さんに呑むなと云われてるからな……」
     少し、困ったように、沖田は視線を斜め上に逸らした。
     ……体調を気遣っての事か?
     あえて、ここでそれを問いただすつもりはないが、彼が身体を病んでいる事は知っている。
    「……でも、大丈夫ですよ。もうひとつ、頂いてもいいですか。口の中で蜜がひろがるのがたまらなくて」
     ボンボンがよほど気に入ったのか、沖田はもうひとつ、酒の入ったその菓子を手に取った。
     蜜をこぼさないようにと、真上を向いて口に入れる様子は、まるで幼い子供のようだ。

    「……呑めないわけではないんですけどね、僕、あまり顔に出ないらしくて。気がつくと周囲が思ってる以上に酔ってるから危なっかしいって……土方さんに注意されたところ……なんです」
     ……そういうことは、先に云わんか!
     ……と、思ったのはあとの祭りだった。

     ふらりと、彼の上体が倒れる。
    「おいっ! 大丈夫か」
     思わず駆け寄り、彼を助け起こした。
     しばらくの間、沖田はそのまま動かなかった。

    「小僧……、沖田君、しっかりしたまえ」
     よほど辛いのか、声をかけると同時に、彼の手が私の背中にまわる。

    「……山南さんの…匂いがする」
     私の胸に顔をうずめたまま、沖田がぽつりと呟いた。
    「匂い……だと? 着物に香を焚き染めてはあるが。山南君も伽羅を愛用していたか」
     云いながら彼の肩に手をかけ、身体を離そうとした。
    「もう少し……、このままでいてはくれませんか」
     沖田の、細い手が、私の首筋へと伸び、耳の後ろをすぃと撫でる。
     ひやりとした指の感触が、全身をざわりと波立たせた。
    「な、何をふざけているっ」
    「やだな。ふざけてなんかいませんよ……大久保さん」

    「や、やめんか……」
     ほそい、頼りなげなこの身体の何処に、そんな力があるのか。
     気がつけば組み伏せられ、私の全身は彼を見上げる格好で畳に押し付けられていた。
    「私は、山南君ではないぞ」
     かろうじて平静を装い、私に馬乗りになった沖田を睨みつける。
    「ふふっ」
     
    「そんなこと、当たり前じゃありませんか、大久保さん」
     大胆不敵な目で、彼は私を見据えた。
     今にも触れ合おうかという距離まで顔を近づけると、彼は私の首筋を強く吸った。

    「くちづけは……お預けしておきますね。あなたを連れて逝くわけには行かないから……」
     切ないほど熱い息が、私の耳にかかる。

     私に沈んだ彼の、ながい髪が、さらさらと肌の上を流れる。
     その音を聴きながら、私は目の前に落ちたボンボンに手を伸ばすと、それを口に含んだ。
     しばらく終わりそうにない、彼の計略に、私はまんまと堕ちていく……


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