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    「幕恋-etc.-」
    とりっかとりいと

    とりっかとりいと-1-

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    1.

    「またか……」
     私の非常に気に入っている菓子が、また売り切れていた。
     時々あることだ。
     どういうわけか、この男、沖田総司とは甘味の店でよく出くわす。
     しかも求める品が悉く同じで、大抵どちらかが買い求めた直後に売り切れ、片方は買いそびれる。
     今日は、私が買いそびれた番だった。

     だが、しかし。まさかこの店で彼と出くわすとは意外だった。
     ここは、その辺の甘味処とはわけが違う。皇室や将軍家も御用達の由緒ある菓子司だ。

    「よかったら、お譲りしますよ」
     私が同じものを求めたことに気がつくと、彼はにこやかにそう云った。
    「いや、けっこう。こちらはさほど緊急ではない故」
     新撰組の幹部が直々に、このような老舗の菓子司に出向いて求めるのだから、よほどの要人の客があるのだろうと、私は勝手な推測をした。
    「会津藩のお偉方でも来られるのかな」
    「いえ、僕個人の勝手な買い物ですので……大久保様こそ、大事なお客様があるのではと思ったんですが」
    「個人の……買い物だと?」
    「ええ、ですから、どうぞお気になさらず」
     屈託のない笑顔を向けて、沖田は私に菓子の包みを押し付けようとする。

    「ということで、すみません。僕はまた来ますので、注文にしてもらっていいですか。大口でなくて申し訳ないんですけど」
    「ああ、沖田はん、お急ぎやったら、干す前の蜜漬け、お分けしまひょか。明日にはちゃんとしたのんお出ししますさかい、今日はそれで凌いでもらういうことで」
    「えっ、いいんですか。助かります」

     店主との、慣れ親しんだやり取りに、私は目を見張った。
     橙糖珠と云われるこの菓子は、煮詰めて蜜漬けにした金柑にすり蜜をくるんだもので、大変な手間隙をかけて作られる。
     その秘伝にちかい作業過程のものを、常連とはいえ簡単に分けるとは…。

     
     





    2.

    「小僧、よほど店主に気に入られているな」
    「このお店は、僕たちが江戸から京に来たばかりの頃からお世話になってて、山南さんとよくお遣いに来るうちに僕までなじみに入れてもらってるんです」
     にこにことそう云うが、この店に常連扱いされるのは並大抵のことではない。
     ここは一見を嫌う京の菓子司の中でも一二を争う老舗で、江戸から来た荒くれ者の《壬生狼》が、私用の菓子を求めて出入りすることを歓迎するような店ではない。
    「新撰組さんいうたら、怖いお人ばっかりや思うてましたけど、山南はんや沖田はんは別どす。ご無体云わはるお客さんからも、事が大きならんよう、上手いこと守ってもろて、助かってますのんや」
    「なるほど……山南君が、な」
     山南敬助。鬼の土方に対して『仏の山南』とまで呼ばれた、新撰組の総長だった男。
     彼の人柄と、この沖田の人懐っこさなら、確かに気難しい店主の心も動くというものか……。

    「惜しい人でおましたなあ……」
     とろりとした蜜を絡めたままの金柑の実を、手ごろな壷に小分けにしながら、店主が故人を懐かしむ声を出した。
    「ええ……、僕にとっては兄のような人でした……」
     柔らかな笑みのまま答えた沖田の、目の色が曇る。

     総長の身でありながら脱走を企てたとして、山南は切腹をしたと聞く。
     真偽の程は定かではないが、身内でさえ容赦なく手にかける集団として、新撰組が恐れられる所以のひとつになった噂だ。
     命を下したのは副長である土方だと、京の街中に広がってはいるが、介錯をしたのがこの沖田だということまでは、今のところ広くは知られていないようだ。
     店主は懐かしそうに、山南の思い出話をしばらく続けた。
     沖田はそれを止めることもなく、静かに相打ちをする。
     そんな彼の心中を、どうしてだか庇ってやりたい気持ちになった。
    「んっんっ」
     咳払いをして、店主をこちらに向かせる。
    「……では、店主殿。こちらの橙糖珠はありがたく私が買わせていただく。小僧……こちらの一番隊組長殿の分も支払いは一緒で構わん」
    「えっ、それは困ります。ご主人、僕、自分で払いますから」
     慌てたように勘定を済ませようとするのを押し切り、店主に代金を支払うと私は店を出た。
    「あ、待ってください、困ります」
     店主にぺこりとお辞儀をし、沖田が後からついて来る。


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