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    「Coyote-幕恋 沖田 風√ 捏造-」
    我、百鬼夜行を逝く……

    我、百鬼夜行を逝く……-5-

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    9.

    「きっと、みんなに気を利かせてくれたんですよ、総司くん」
     姉さんは、そう云った後、一瞬だけ、部屋の外を気にする仕草を見せた。
     すぐにこちらに向きなおして、柔らかに微笑む。
    「やっと、みんな無事で揃って。こうして会えて。ほんとによかった」
     俺たちに、お茶のお代わりを注いでくれる姉さんは、確かに雰囲気が変わった。
     どこか落ち着いて、事件の前よりも随分と大人びて見える。
     大久保さんの見立てらしい、落ち着いた色味の着物のせいかもあるかもしれない。

    「ありがとう、未夜さん。しばらく会えなかったせいかな。立ち居振る舞いが美しくなりましたね」
    「なっ! 武市さん。何云ってるんですかっ。そんなことないですよっ……」
     ……武市さんも、同じことを思ったらしい。
     もっとも俺には、そんな痒い言葉はすらりと口に出来ないけれど。
    「で、でも。ちょっと嬉しいな。女中さんたちに色々教わってるんです」
    「フン。私専属の雑用係という名目でここにいるのだ。不細工な振る舞いはさせられんからな。ところで、この散らかった菓子の器は、いつ下げるつもりだ」

    「こっ! これから片付けますっ!」
     大久保さんに向かって頬を膨らませてみせたあと、姉さんは空いた器を集めはじめる。
    「それと、私のお茶を淹れなおして来い。二番煎じなど薄くて飲めん!」
    「はーい。わかりました」

    「「返事は短く!」」
     大久保さんと、武市さんが同時に注意した。
    「はいっ!」
     ……なんとなく間があって、そこにいた全員がくすりと笑みを漏らした。

    「ああ、それからな、未夜。お茶はゆっくりと時間をかけて煮出せ」
    「……? いつもそうしてますけどっ」
    「まったく。口ごたえせずに返事が出来るまでには、まだまだのようだな。時間はかかってもよいから、……様子を見て来い!」
    「…………っ! はいっ」

     急に、顔色を変え、姉さんは慌てたように部屋を出た。
     彼女の足音が聞こえなくなると、大久保さんが鼻をならして云った。

    「鳶に攫われた油揚げは、思いのほか大きかったようだな、武市君」
    「な、なんのことです。大久保さん」
    「先生は、油揚げなどにがっついたりせんっ」
    「……以蔵。お前は口を閉じていろ……」
    「はい……、すみません」

     鳶と油揚げが何の比喩だったか、本当は以蔵くんにも分かっていたのだと思う。
    「……がっついておくべきだったかもしれんぞ」
     武市さんをからかうだけにしては、大きなため息が、大久保さんの口から漏れた。
    「無理じゃ。あの油揚げは、最初から鳶の口にしか入らんき」
     にししっと、少し寂しげに龍馬さんも笑う。



    10

    「おっと、これも片付けてくるっス」
     龍馬さんが食い終えたぷりんの器を持って、俺は部屋を出た。
     ……沖田に、返すものもあった。

     藩邸の奥にあるという彼の部屋を目指すと、縁側に人影がふたつ、静かに並んでいた。

    (邪魔しちゃ悪いっスね……)

     引き返そうとして、話が聞こえてしまう。

    「ごめん、かえって気を使わせちゃったかな」
    「ううん……ほんとに、大丈夫?」
    「うん。本当にね、自分でも驚くくらい楽なんだ。だから、心配しないで」

     話しながら、姉さんはそろそろと沖田の背を撫でている。
     その姉さんの髪についた花びらかなにかを、すぃと手を伸ばして、沖田がとってやる。

     深刻そうな会話のわりに、落ち着き払ったふたりの姿は、まるで一枚の絵のようで、俺はつい、引き返す足を止めてしまった。
     俺の気配に気付いたのか、振り返った姉さんと目が合った。

    「あ、慎ちゃん、呼びにきてくれたの?」
    「あ、いや、……すまないっス。その、邪魔してしまって」
    「そんなことないですよ。僕も、あなたが来るころだと思ってました」
     にっこりと微笑んで、沖田は慌てもせず、姉さんの髪から手を離した。
    「そう、その……これ、返さないとと思って。あの時は、本当に助かったっス」
     俺は深々と頭を下げ、彼にあの時の竹筒を差し出した。
    「あ、いや……余計なことをしてしまったんじゃないかと、気にはしてたんです……その…、口はつけてませんから、大丈夫ですよ」
    「俺、そんな潔癖じゃないッスから、気にしないっスよ?」
     渡された竹筒を見た沖田が、意外なことを気にしたので、少しおかしくなって俺は笑った。


    「あ、じゃぁ、わたし、大久保さんのお茶見てくるね。『超激渋』にしてこなきゃ」
     姉さんは立ち上がると、炊事場へ向かおうとした。
    「慎ちゃんも、まだ無理しちゃだめだからね。後で包帯代えに行くから、龍馬さんとふたり大人しくしててね」
     なんだか、今の姉さんには逆らえないような、不思議な気迫を感じる。
     俺が眠り続けていた間も、姉さんがずっと世話をしてくれたと、大久保さんから聞かされた。
     それを思い出したとたん、胸の包帯が急に温かく感じられて、思わず手を触れる。
     
     姉さんが行ってしまうと、少し緊張した時間が流れた。
     会話の切り口を探していると、沖田が先に話し掛けてきた。

    「あの時、僕のことを、坂本さんだと思ったんでしょう?」
    「あ、ああ……面目ないっス。あの時は正直云って夜目も利かないくらい動転してたっス」

     こうして改めて見ると、龍馬さんとは背丈も体格も違う。
    「武士として、恥ずかしい限りっス。龍馬さんでないなら、その……」
     素直に云おうとしたことが、あまりに失礼な言葉だと気付いて、俺は口ごもった。
    「あは。化け物だと、思いました?」
     愉快そうに、沖田は笑った。

    「でもね。それ、多分間違ってないです」
    「えっ、化け物には見えないっスよ」
    「やだな。そっちじゃなくて。坂本さんの方」
     沖田が、何を云おうとしているのか、すぐには分からず、俺はただ彼の次の言葉を待った。
    「あなたを助けたのは、僕じゃなくて、きっと坂本さんなんです。いや、彼の執念……かな」
     竹筒から取り出した金平糖を、沖田は手のひらで転がしながら話し続けた。

    「だって、そうでしょう? 僕は未夜さえ無事ならそれでよかったんだから」
     沖田は無邪気な笑顔のまま、随分はっきりと思ったことを口にした。

    「あなたを追ってたのは僕の隊の隊士じゃなかったし、僕は未夜の進路を安全に掃除できればそれでよかった。だけど、気付いたら、身体が動いてた。ああ、坂本さんがそうしたいんだなって、なんとなく思ったんです」

     先ほど、俺の腕を掴んだ時の龍馬さんが、一瞬、沖田と重なって見えた。

     《誰ひとり、誰ひとりもじゃ。誰ひとり欠けさせん……》

    「龍馬さん……」
     あの時、龍馬さんから感じた、沖田と同じ気迫。
     あれは、殺気などではなくて、生き残る覚悟だったのかも知れない。

     俺は、笑顔で差し出された金平糖を受け取って、その相手の貌をもう一度見た。
     どんな決意を持って、彼がここにいるのか、俺はあえてきかなかった。


     百鬼夜行の道の向こう。
     そこに、目指すものがあるのなら……。
     彼も、龍馬さんも、それから、あの何かを悟ったように柔らかな微笑みを絶やさない姉さんも。
     皆、目的は違えど、あの日、土蔵のなかで同じ決意をしたのだろう。


     夕刻の、ぬるんだ風が、今日もざわりと、吹き始める。

    ――――――END――――――


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