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    「幕恋ー武市半平太-」
    桜咲く夜のなか―As You Like It―

    桜咲く夜のなか―As You Like It―3

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    武市Side 
     
     未夜さんを部屋まで送り、布団を敷いてやる。
     いつだったか、反対の立場だったことがあるな……。
    「さあ、今日は横になっていなさい。水をもらってきてあげよう」
     そう云って部屋を出ようとした。

     ぴっ。

     袖を引っ張られる。ずっと、掴まれたままだったか。
    「未夜さん、離してくれないと、水を取りに行けないのですが」
    「やだ……」
    「ん?」
    「ひとりにしちゃ、やだ……」

     正直なところ、決して嫌な気分ではない。
     しかし、だ。この状態は非常に……まずい。
     と、とにかく。布団の上は、まずい。

     酔いのせいか、いつもよりも濃い色に頬を染めた未夜さんが、瞳を潤ませて僕を見上げる。
     その頬に、そっと触れる。
     そのまま顔を近づけて、できるならば、この柔らかな唇に触れたいと思う。
     
     ……それで、どうなる?
     彼女には、かえる世界があるというのに。
     
     自問自答した後、頬に触れた手をそっと離して、目を逸らすと、庭の桜に気がついた。
     この寺田屋の庭には、そこそこに立派な桜が一本。ちょうど、今を盛りの花を咲かせていた。

    「では、庭で桜でも見ますか。少し夜風にあたるのもいいかもしれない」
     彼女は、こくんとうなずいた。
     
     ……夜風にあたったほうがいいのは、きっと僕の方だろう。

     この京都には、名所と呼ばれるほどの桜の美しい場所が、いくつもある。
     しかし、せっかくのこの季節も、追われる身の僕たちでは、未夜さんを花見に連れて行ってやることはなかなか出来ない。

    「いつもの庭で悪いが、ここの桜もなかなかに趣がありますよ」
     縁側を指差すと、未夜さんはおぼつかない足取りで、そちらへと歩き始める。
    「ほら、危ない」
     倒れそうになったのを支えると、また、腕にしがみついてくる。
    「ふにゃっ。たけちさんの手、あったかいれす…」

     ……それは、さっきまで、君の頬に触れていたから。






    「ふわぁ……、きれい、れすねぇ」
     ちょうど吹いてきた風に乗って、庭に散る花びらを見て、未夜さんが声をあげた。
    「ふふっ。ふふふっ。さくら、さくら~」
     よかった。少しは、気が紛れたようだ。
     そう思った時、

    「さ~く~ら~、さ~く~ら~」
     裸足のままで、彼女は庭へと降りていった。
    「未夜さん、走ると危ない!」
     慌てて、後を追う。

    「さ~く~ら~、さ~く~ら~」
     桜の木の周りをくるくるとまわりながら、彼女が口ずさむ。
    「おや、この旋律は……」


       さくら さくら やよいの空は 見わたす限り
       かすみか雲か 匂いぞ出ずる……


     これは確か、子供用の箏の手ほどき曲だ。
     
    「いざや いざや……見に ゆかん……」

     つられて、口をついて出る。
     未来にも、伝わる曲があるのだな……。

    「はにゃっ。たけちさん、きれいな声れすね~」
    「い、いや、そんなことはない……」
     僕としたことが、人前で歌うなど……。
     伐の悪さに、口を押さえる。
     未夜さんが、そんな僕を覗き込む。
     そのあまりの顔の近さに、一瞬うろたえる。
     彼女が素面なら、決してそんな角度から、僕を見上げたりはしない。

     自分のしたことで僕が怒っていないかどうか、遠慮がちな眼で僕を見つめることはあっても。
     これほど大胆に、僕の懐に飛び込んできたりはしない。

     ……今日の君は、いつにも増して、無防備で。このまま、きつく抱きしめてしまいたくなるよ。

    「たけち、さん」
     未夜さんが、さらに一歩、顔を近づけた。

     『ドン!』

     ……え?

     いきなり、未夜さんが力任せに胸に飛び込んでくる。
     あまりにふいの出来事で、僕の重心が崩れる。

     ちょうど目の前の桜を見上げる格好で、その場に倒れた。
     未夜さんが、僕の上から見下ろしている。
     これは……つまり、押し倒された、と、いうべきなのか。




     舞い散る桜を背景に、未夜さんが泣きそうな顔で僕を見つめ続ける。
    「しんぱい、したんですよ。いっぱい、いっぱい……しんぱいしたんですよ」
     ……今日の帰りのことを云っているのか。
    「わたし、なんか。役に立たない、って。わかってるけど、でも、しんぱい、したんだから」
     ああ、また、泣かせてしまった……。
     ぽろぽろと、流れ出た涙が、頬をつたって、僕に落ちる。
    「いくら、わたしのこと、逃がすためだからって、もう、あんなこと、しないでください」
     そう云われて、さきほどのことを振り返ってみる。

     僕はあの時、わざと明るい方向に走り出た。
     新撰組の注意をひきつけようと。未夜さんを、確実に逃がそうと。
     だが、それは、僕の慢心だったかもしれない。
     捕まるヘマはしないと、たかをくくって、結局、帰りが大幅に遅くなった。

    「すまなかったね。もう、あんな真似はしない。君を不安にさせることは、もうしないよ」
     彼女の涙を、そっと指で掬う。
     後で、以蔵にも一言詫びねばな……。

     愛おしい、愛おしい、愛おしい、君。
     全て投げ捨てて、抱きしめたくなる。
     使命も、志も、……君の、未来も。

    「たけちさん、わたしの、こと、きらいですか?」
     月の灯りの下、桜の舞う中で、彼女の貌がしろく映える。
    「嫌いなわけがない……どうして?」
    「だって……キスしてくれない」

     きす……? とは、なんだろう。
    「ふすまでしきった、お部屋で、すぐ、となりにいるのに……」

     ……すまない。話が見えなくなってきた。けれど、これだけは云える。
    「君を、嫌いなわけがないじゃないか」
    「じゃぁ、キス、してください」
     云うなり、彼女の貌が近づいてくる。気がつけば、僕の唇は塞がれていた。

     唇を、そっと重ねるだけの、幼いくちづけ。
     これが、きす、というもの?
     そのまま、彼女の頬を両手で挟む。
     少し、顔を離して、きっと、その先を知らない彼女を見つめる。
     

    「嫌えるわけが、ないだろう……?」
     今度は、僕の方から、唇を重ねる。
     ゆるく上唇を咥えて、もう一度重ねる。
    「きす……の、お返しだよ」
    「たけち、さ……」
     真っ赤に染まった頬は、酔いのせいだけ?
     彼女の髪を撫でながら、思う。
     このまま、この小さな唇に割り入って、思いのたけをぶちまけてしまおうか。

     ……でも、その様子では、明日の君は何も憶えてはいないのだろう? 
     それは、あまりに哀しいじゃないか。

     だから、今は、君の望むまま。
     ちいさな、《きす》を繰り返そう。

     君の酔いが冷めるまで。
     僕は君に酔いしれる……

     ―――君の酔いが、冷めるまで


       ――――END――――
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