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    「幕恋-etc.-」
    薫る春・・・

    薫る春・・・4

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    沖田Side


     今、僕の隣にいるのは、武市半平太。
     何度も取り逃がして、煮え湯を飲まされた彼が、すぐそばにいる。

     決して気取った店ではない甘味屋の店先で、彼はきちんと懐紙を出して、僕から大福を受け取った。
    「どうも、ありがとう」
    「い、いえ、ご遠慮なく」
     改まって礼を云われると、こっちまでかしこまってしまう。
     手づかみで渡したのが気が引けるくらいに。

     どうして、彼を呼び止めてしまったんだろう。
     身に染み付いて、僕自身忘れてしまっていたほどの、その香りがしたから?
     なんとなく、話をしたいと、思ってしまった。
     だからって、『香楽堂の練香使ってますか?』なんて、唐突に訊く勇気はさすがにない。

     『実はさっき、貴方のこと、ある娘さんと間違えたんです』
     ……うん、もっとダメだ。
     あっ、でも、もし、そう云ったら、この静かな人はどんな反応をするだろう。
     想像したら可笑しくなって、吹き出しそうになった。
     慌てて、店主の持ってきてくれたお茶を、一口啜る。
     
    「では、お言葉に甘えて、いただきます」
     彼は律儀に、僕がお茶に口をつけてから、僕の差し出した大福を一口齧った。
     気まずさを隠せないまま、黙々と口に運ぶ彼を見る。
     僕も一個目の大福に手をつける。

    「僕、ここの大福、大好きなんです。譲ってもらって、ほんとに嬉しかった」
     結局、無難な会話しか浮かんでこなかった。
    「ここのこしあんの味は、他では味わえない絶妙な甘さがありますね。いい材料を使っているのが分かる」
     ……相槌を打ってもらえるとは、思わなかったな。
     しかも、ちょっと嬉しそうだ。
     僕もなんとなくほっとして、次の大福に手を伸ばす。
     うん、やっぱりここのこしあんは美味しいな。


     それにしても、本当に、動きがきれいな人だな。ひとつひとつの動作にまったく無駄がない。
     新撰組の僕に声をかけられて、動揺していない筈はないのに、全く表に出さない。
     粉のついた大福を食べても、口元が少しも汚れない。

     『未夜さん、口のよこ、あんこついてますよ』
     『沖田さんこそ、ほっぺに粉ついてます』
     
     僕たちのお行儀とは、基本が違うな。

     そういえば彼女は、行儀作法や読み書きを教えてくれる人がいるって話してくれたっけ。
     なんとなくだけど、こんな先生なんじゃないだろうかって思う。

     彼女は、いつも、最初の一口目を頬張ろうとして、はっと気付いたように懐紙を取り出す。
     多分、その瞬間に、先生の咳払いでも思い出すんだろうな。
     習いたての行儀作法を守ろうと、一生懸命なのがよくわかって、それがとても可愛いんだけど。

     食べ終わった後も、使った懐紙は丸めたりせずに、丁寧にたたんで口元を拭く。
     そう、ちょうど、今、彼がやっているみたいに。
     でも彼女の動作は、もっとぎこちなく、て……

     ああ、やっぱり、この人は……

     『使い方がわからなかったら、お家の人といっしょに使ってください』

     未夜さんは、この人に、使い方を聞いたんだね。
     街で出会った時に、一瞬戸惑う、その理由も、合点がいく。
     この人のところにいるんじゃ、僕は……彼女の、敵。

     香りがいっしょだったから、だけじゃない。
     未夜さんと、同じ空気を、この人は持っているんだ。
     
    「ごちそうさまでした」
     座ったまま、体をこちらに向けて、彼がお辞儀をする。
     顔を上げた彼と、目が合った。
    「君……。」
     
     しろい、大きな手が、突然、僕の顔に向かって伸びてきた。




    武市Side

     店先の縁台で。
     気まずいながらも、僕は彼の隣に腰掛けた。
     店主は僕の正体を知らないまま、ふたりにお茶を運んでくる。
     お得意同士が仲良くなるのは嬉しいことなのか、このお茶は店の奢りだと云ってくれる。
     
     新撰組の沖田が、僕を捕らえること以外になんの目的があるのか。
     興味を抑えきれずに誘いにのったものの、彼は特に話を切り出そうとしない。
     
    「どうも、ありがとう」
     礼を云って、彼が差し出した大福を受け取る。
    「い、いえ、ご遠慮なく」
     物をいただいたら当然の礼を云っただけで、やけに緊張した返事が返ってくる。
     彼がお茶を一口啜ったので、僕もせっかくの彼の厚意に甘えることにした。

    「僕、ここの大福、大好きなんです。譲ってもらって、ほんとに嬉しかった」
     やっと彼から切り出した言葉は、なんとも無難なものだった。
     しかし、逆に、こちらも少しは緊張が解ける。
    「ここのこしあんの味は、他では味わえない絶妙な甘さがありますね。いい材料を使っているのが分かる」
     答えると少し、微笑ましい気分になった。
     やはり好物の大福は、緊張したままよりも、少しでもゆったりと味わいたい。

     それにしても、本当に、甘いものが好きなのだな。いったい何個目だ。
     この細い身体に、よくそれだけ入るものだと感心する。
     しかも、捕らえるべき敵の目の前で、全く警戒していないわけではなかろうに。
     口元に粉をいっぱいつけて、無邪気なものだ。

     ふふっ、
     まるで、未夜さんのような……

     どうして、ここで彼女を思い出したのか。
     『新撰組の笑う修羅の、大福の食いっぷりが、君にそっくりだったよ』
     そんなことを云ったら、彼女は頬を膨らませて怒るだろうか。

     ……莫迦な。僕としたことが、どうかしている。
     ここで沖田に会った話など、出来るはずもない。

     大福を食べ終えたので、使った懐紙をたたみ、口元を拭く。
     彼が、何かに驚いたようにそんな僕の動作を見ている。
     ……何か、作法に間違いでもあったか?

    「ごちそうさまでした」
     礼儀を通そうと、彼の方を向いてお辞儀をした。
     顔を上げて、彼と目が合う。

    「君……。」
     ……しまった。つい、いつものクセが出た。
     どうしても、彼の口元についた餡粒が気になって……
     指で、摘み取ってしまった。

     餡のついた指先が、彼の顔の前にある。
    「し、失礼。つい、気になって……」
     ひっこめようとしたその手を、彼の細い指が掴んだ。
     彼はそのまま、自分の口元へ僕の指を持っていく……

    「ぺろっ」

     ……………。
     ……………………………!!!

     今、何が起きた?
     生暖かい舌の感触が、まだ指先に残っている。

    「ああ、すみません。食べ物は、粗末にしちゃいけませんよね」

     固まって動けない僕にお構いなく、彼はけろっとした様子で笑った。

    「土方さんにも、しょっちゅう怒られるんです……。あれ、どうしました? って、あっ!」
     彼は急に慌てた様子になって、懐紙を取り出すと、先ほど舐めた僕の指を拭こうとした。
    「すみません、つい、いつもの調子で……」
    「あ、いや、こちらこそ、とんだ失礼を……」
     懐紙を受け取ろうとして、近づいた時、ふわりと、彼から覚えのある香りが漂った。

    「この、香りは……」

     『使い方がわからなければお家の人といっしょにどうぞって云われて……』

    「使い方……教えてあげてもらえましたか?」
     彼が、寂しげな眼で、笑った。





    「で、物は相談なんですけど」
     大福を満足するまで食べおえた彼が、粉のついた指をぱんぱんと叩きながら云った。
    「本来なら貴方を捕らえないといけないわけですが、さっきも云ったけど、今日は、僕、非番なんです」
     にっこりと余裕の笑みを見せる彼の顔に、先ほどとはまるで違う凄みが見える。

    「今日、ここで会ったこと、秘密にしててもらえませんか。特に、未夜さんに」
    「無論、僕も誰にも話すつもりはない。が、君には特に不都合はなさそうだが」
    「わかってないなぁ……」
     大げさにため息をついて、彼は云う。
    「練香贈ったのが僕だって、貴方にばれたこと、未夜さんに内緒にしてて欲しいんです」
     確かに、彼女はあの練香の贈り主を頑として明かそうとはしなかった。
     同時に、彼女は彼に対して、僕たちのことを一言も漏らしてはいまい。


    「そんなに、大げさなことじゃありません。僕はせっかくできた甘味友達を失いたくないだけです」
    「確かに君が、彼女の『世話になっている家』に気付いた以上、彼女は君と会えなくなるな」
     彼の云っている意味の、重大さにようやく気付く。
    「僕も彼女の秘密は守ります。今まで通り、気付かなかったことにすればいいだけだ」
    「そんな事をして、君は大丈夫なのか」
    「ばれたら、もちろん切腹ですね」
     彼は笑顔を崩さない。
    「だから、隊服を着た時の僕からは全力で逃げてくださいね。一番隊組長として、僕は全力で貴方たちを追う」
     笑いながらも、真剣な眼が、射るように僕を見続ける。
    「よし、秘密を、共有しよう。僕と君と……未夜さんとで」
    「やっぱり、貴方と話せてよかった」
     彼の笑顔が、また、無防備な子供に変わった。

    「でね。もうひとつお願いがあるんですけど」
    「…………この際だ。云ってみなさい」
    「僕、この先の、清閑堂の草団子も大好きなんです」
     …………は?
    「奢ってくれますよね?」
    「待て、君はあれだけ大福を食って、まだ入るのか」
    「いいじゃないですか。僕、失恋したんだから、なぐさめてくれたって」
    「さぁ……まだ、それはわからないな」
     失恋もなにも、彼女は未だ、誰のものでもない……。
     彼の贈った練香の入った可愛らしい壷は、僕の贈った火道具の一式と、仲良く並んで、彼女の部屋に飾られている。
    「ほんとに? じゃぁ、いつか、貴方から奪いにいきますね」
     さらりと、云ってのける彼の顔を見て、僕は内心、しまったと思った。

    「それはそれとして、やっぱり団子奢ってください」
     しっかりと、僕の袖を掴んで彼はついてくる。
    「分かったから、子供みたいに袖を掴むのをやめなさい」
    「そんなこと云って、逃げないでくださいよ」
    「隊服を着てない君から逃げてもしょうがないだろう」
    「やった。武市さん、大好きです」
    「やめたまえ! 気色の悪い」

     ともすれば命がけの秘密を、僕たちはこうして分かちあうことになった。

     明日も晴れそうな、ある春の日の、夕暮れ時―――

    ―――END―――
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    着々と

    こんにちは。こちらでは初めてコメントいたします。のにーです。が、お外では茶々にしております。今後ともよろしくお願いいたします。続々とアップなさっているのですね。嬉しいなー。壁紙とかすごく雰囲気があってやっぱり違いますね。また、このお話大好きなんです。武市せんせーが出ているということもあるのですが、総司くんがなんか、一所懸命でかわいいです。早く、せんせーから奪いに行っちゃってください。
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