スポンサー広告

    スポンサーサイト

     ←はじめに →薫る春・・・4
    上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
    新しい記事を書く事で広告が消せます。



    にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
    もくじ  3kaku_s_L.png はじめに
    総もくじ  3kaku_s_L.png Coyote-幕恋 沖田 風√ 捏造-
    総もくじ  3kaku_s_L.png 幕恋-沖田総司-
    総もくじ  3kaku_s_L.png 幕恋-中岡慎太郎-
    総もくじ  3kaku_s_L.png 幕恋ー武市半平太-
    総もくじ  3kaku_s_L.png 幕恋-etc.-
    総もくじ  3kaku_s_L.png 頂き物
    もくじ  3kaku_s_L.png PRIUS
    もくじ  3kaku_s_L.png キリエ君の日常
    もくじ  3kaku_s_L.png 塔の語り部
    もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
    もくじ  3kaku_s_L.png お知らせなど
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    【はじめに】へ  【薫る春・・・4】へ
    • TB(-)|
    • CO(-) 
    • Edit

    「幕恋-etc.-」
    薫る春・・・

    薫る春・・・3

     ←はじめに →薫る春・・・4
    武市Side

     先日、練香を焚くための火道具を、未夜さんに贈った。
     それから、彼女は時々、僕を部屋に招いてお茶をご馳走してくれる。
     といっても、僕だけでなく、寺田屋の女将もいっしょなわけだが。
    「やぁ、ほんまにええ香りやわぁ。この贈り主はん、なかなかええとこに目ぇつけてはりますなぁ」
     香に関しての正しい使い方は、僕などよりも女将のほうが詳しい。
     『お家の人といっしょにどうぞ』という贈り主の言葉どおり、僕と女将は香のご相伴に預かっているわけだ。
    「この香は、香楽堂さんの調合どすな。決して高い品やおまへんけど、柔らかい優しい香りやさかい、若いお人や初めてのお人には、よう合うた品どす」
     女将はすっかり、この謎の贈り主がお気に入りで、いつか、彼が未夜さんを訪ねてくる日を、心待ちにしている節がある。

     さて、その日も未夜さんの練香で、女将の香道入門の講義を聞いた後、僕は薩摩藩邸への所用に出かけることになった。
    「お茶をご馳走様。お礼に宝積屋の大福をお土産に買ってくるよ」
     

     その帰り道。約束どおり、土産に買っていこうと、店に入ろうとして。
     先にいた男が、ふいに振り向いた。
     人懐っこい目が、まっすぐに、僕の目と合う。

    「―――――― !!!」

     その、顔に、心臓が止まりそうなほどの衝撃を憶える。


     僕としたことが、油断が過ぎた。
     こんな場所で、まさか新撰組と出くわすとは。
     しかも、相手が悪すぎる。

     ―――新撰組一番隊組長、沖田総司……!!

    「し、失礼。知人が来たと勘違いを……」
    「い、いや。お気になさらず」

     一瞬の沈黙の後、お互い動転して、顔を逸らした。
     瞬時に平静を装い、何事もない顔で、僕は店の奥へと急ぐ。

     向こうが、僕の正体に気付いたかどうかは、まだわからない。
     手配書は出回っているようだが、今のところ完全には、僕の面は割れていないはずだ。
     気付かれていたとしても、彼が動くとすれば、店を出た後だろう。

     この後の対策なら、すでに心得ている。
     彼を振り切って、撒くまでの道筋はいくつか思いつく。
     振り切れなければ……その時はその時で、最善の選択をするまでだ。
     まぁ、どちらかが、あるいは双方が、無事にはすまないな。 
     冷静になるには、充分な余裕はあるはずなのに、動揺が何故かおさまらない。


     危機感よりも先に、僕は、彼の無防備さに戸惑いを憶えていた。
     彼が、僕を誰と間違ったのかは、知るよしもない。

     ……なんという、邪気の無い笑顔を浮かべるのか。
     しろい頬をわずかに染めて、まるで、子供……いや、少女のような。
     あまりに無防備に笑いかけられたので、一瞬、見詰め合ってしまった。
     その時の動揺、というよりは……気まずさが、いつまでも離れてくれない。
     ……まったく、僕らしくもない。

    「御主人、いつものを包んで欲しい」
    「へぇ、毎度おおきに」

     店主は竹皮を手に、僕が注文した大福を包んでいく。
     あの間も、ずっと、背中に彼の視線を感じる。
     やはり、気付かれたか……。
     だが、その視線に殺気は感じられない。

     向こうも、僕同様に戸惑っている節はある。
     無理もない。一瞬とはいえ、あのような無防備な笑顔を、赤の他人に見せてしまったのだから。
     だが、今、背中にひしひしと感じるこの視線は、戸惑いというものでもない。
     この得体の知れない視線が、僕が冷静になるのを邪魔していることは明らかだ。

    「あっ!」
     突然、彼が声をあげた。


     



    沖田Side

     ―――あ、この香りは……

     彼女だとばかり思って、振り向いた。
    「し、失礼。知人が来たと勘違いを……」
    「い、いや。お気になさらず」
     思わず目が合ったその男も、決まり悪そうに店の奥へと入っていった。
     それはそうだろう。
     いきなり僕が振り向いて、嬉しそうに笑いかけたりしたものだから。
     彼も驚いたのか、しばらく見詰め合ってしまった。

     彼女に贈った練香は、特に高価なものでも珍しいものでもない。
     僕が部屋の臭い消し代わりに、火鉢に仕込んでいる程度のものだ。
     それと同じ香りがしたからといって、彼女と間違えるなんて。
     しかも、あんな大柄な男と間違えたなんて、彼女に申し訳ないじゃないか。
     いや、でも、彼女に話したら、笑ってくれるかな。

     そんな事を考えながら、その男の背中を何の気もなく見る。
     ぴしりと伸ばした背筋。隙のない、洗練された動作。
     僕の視線にはとっくに気付いているだろう。
     平静を装っているけど、ピリピリと緊張感が伝わってきて、気持ちがいい。
     申し分のない、手練れ。

     ――― 願わくば、一度手合わせしたいような。

     いけない。悪い癖が、出そうになった。
     思わず出しそうになった殺気を鎮める。
     でも、このはやる気持ちを、いつまで抑えていられるか。
     何故なら、彼は…………。

    「御主人、いつものを包んで欲しい」
    「へぇ、毎度おおきに」
     彼の注文を受けた店の主人が、その品を竹皮の包みにのせはじめた。

     ひぃ、ふぅ、みぃ……

    「あっ!」
     思わず、声が出る。
     この僕が、先を、越された……。
     宝積屋の名物、こしあん大福。僕の、大好物なのに。

    「すんまへんなぁ、沖田はん。今日はこしあん、これで最後でおますのや」
     
     僕の、こしあん大福……。




    武市Side


    「すんまへんなぁ、沖田はん。今日はこしあん、これで最後でおますのや」
    「えー。残念だなぁ。久しぶりに来れたのに」
    「ほんまに、すんまへん。沖田はん来てくれはるん分かってたら、いっつもの数、別で置いといたんですけども……」
     背後の会話が、非常に気まずい。
     まさに、今。その最後のこしあん大福を買ったのは、僕だ。

    「こちらのお客さんも、この大福よう買うてくれはるんで、今日の所は早いもん勝ちゆうことで、なにとぞ……」
     ちょっ……こちらに、話を持ってこないでいただきたい!
     また、刺すような視線を背中に感じる。
    「宝積屋のこしあん大福が食べれないなんて、人生半分捨てたみたいなもんですよ」
     そんな、大げさな。
     いや、確かに、ここのこしあんは、それくらい絶品ではある。
     そこまで、しょげかえった声を出されると、非常に気の毒な気がしてくる。

     それにしても…………痛い。非常に痛い。
     視線が。
     いっそ、一太刀交える方が、はるかに気が楽だ……。

    「ああー、……御主人、少し、よろしいか」
     店主を手招きで呼び寄せる。できるだけ、あちらに顔を向けたくはない。
    「すまないが気が変わった。包んでもらったところを恐縮だが、桜餅に代えてはいただけないだろうか」
     どうして僕が、こんな気を回さねばならないのか。
     しかも相手は新撰組の沖田だというのに。
     余計な時間をとっている場合ではない、さっさと勘定をすませてこの場を去らねばというのに。
    「ややっ、すんまへん。えらい気ぃ使わしてしもうて。お代の方は勉強させてもらいますよってに」
     桜餅を包みなおしながら、店主が小声で耳打ちしてくれる。
    「ほんま、すんまへんなぁ。この界隈で、新撰組の沖田総司の泣き落としに勝ったお客さんは、まだいてしまへんのや」
     
     ……新撰組一番隊組長、沖田総司。
     街の甘味屋で、何の異名をとっているのだ、君は。


    「えっ、いいんですか。お気遣いありがとうございますっ」
     しっかりこちらの話を聞いていた彼の、嬉しそうな声が飛んでくる。
    「桜餅の時期もそろそろ終わるので、気が変わっただけです。お気になさらず」
     だから、どうして、沖田相手にこんな会話をせねばならないのか……。
    「あっ、そういえばそうですね。僕も桜餅、お土産に買って帰ろうかな」
     待て、その十個以上ある大福は、土産ではないのか? 
     ……と、そんな事を気にしている場合ではない。
    「桜餅が終わっちゃうのは残念だけど、次は柏餅ですねぇ。粽もここのは最高だし、楽しみだなぁ」
     聞いてない、そんな話は聞いてない。
     一刻も早く、この場を立ち去りたい。

     勘定を済ませ、店先へ向かう。
    「待ってください。お礼と云っては何ですが、ここでひとつ召し上がっていきませんか」
     目の前に、無邪気に微笑む彼の顔があった。
    「いや、どうぞお気になさらず」
    「そんなこと云わずに、どうぞ。僕なんかがお茶の相手じゃ、むさくるしいでしょうけど」
     笑顔を崩さないまま、彼が付け加えた。
    「『武市、半平太』さん、」
     
     刀の柄に添えていた左手に、一瞬、力が篭る―――。
     
    「成る程、土産は桜餅と、『僕の首』というわけか」
    「ああ、そういう手もありますね。でも、僕、今日は非番なんです」
     きょとんと見開いた瞳で云う。
     全く殺気のこもらないその言葉に、僕は再び、手の力を抜いた。
     殺気を微塵も感じさせないまま、どこにも隙はないのは流石というべきか。
    「では、ご相伴に預かろう」
     沖田総司、何を考えている?
    関連記事
    スポンサーサイト

    にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
     関連もくじ一覧 ▼ 
    総もくじ 3kaku_s_L.png Coyote-幕恋 沖田 風√ 捏造-
    総もくじ 3kaku_s_L.png 幕恋-沖田総司-
    総もくじ 3kaku_s_L.png 幕恋-中岡慎太郎-
    総もくじ 3kaku_s_L.png 幕恋ー武市半平太-
    総もくじ 3kaku_s_L.png 幕恋-etc.-
    総もくじ 3kaku_s_L.png 頂き物
    もくじ  3kaku_s_L.png はじめに
    総もくじ  3kaku_s_L.png Coyote-幕恋 沖田 風√ 捏造-
    総もくじ  3kaku_s_L.png 幕恋-沖田総司-
    総もくじ  3kaku_s_L.png 幕恋-中岡慎太郎-
    総もくじ  3kaku_s_L.png 幕恋ー武市半平太-
    総もくじ  3kaku_s_L.png 幕恋-etc.-
    総もくじ  3kaku_s_L.png 頂き物
    もくじ  3kaku_s_L.png PRIUS
    もくじ  3kaku_s_L.png キリエ君の日常
    もくじ  3kaku_s_L.png 塔の語り部
    もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
    もくじ  3kaku_s_L.png お知らせなど
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    【はじめに】へ  【薫る春・・・4】へ

    ~ Comment ~

    管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    卜ラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【はじめに】へ
    • 【薫る春・・・4】へ
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。