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    「幕恋-沖田総司-」
    密室

    密室3

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    沖田Side

     驚いたな。未夜が、こんなに暗がりを怖がるなんて。
     小さくなって震えてるのは、熱のせいだけじゃないよね。
     額に手を置くと、いつもは気持ち良さそうに眼を閉じるのに、今日はなんだか様子が違う。
     熱で自由にならない身体をひきずるように布団から這い出して、僕の膝にたどり着く。
     
     独りでいるのが、そんなに不安だったの。
     可哀想に。こんなに震えて。
     この部屋が、そんなに怖かったの。

     僕は、その小さな肩を撫で続ける。 彼女の震えが、おさまるまで。
     
     《暗がりのなかの、居るはずもない何かの気配に怯えきって、もしも、こころ壊れてしまったら。
      君はどんなに、きれいだろう……。》

     その強張った背中をさすり続ける。 彼女の涙が、とまるまで。

    「……落ち着いたかな?」
     少しだけ抱きしめて、背中をぽんぽんと叩く。
     驚いて、逃げられるかと思ったけど、未夜はちいさな頭を僕の胸に預けてきた。
    「ごめんよ。もう少し、早く帰ってこれれば良かったね」
     ふるふると、未夜は頭を横に振って、僕を見上げる。
    「わたしこそ、ごめんなさい。みっともないとこ、見せちゃって……子供みたい」
    「病人は、いくらでも子供になっていいんだよ」
     そう云うと、彼女は安心したように、やっと笑った。

    「そうだ、お土産があるよ」
     菓子司の主がくれた夏柑糖を、彼女の手にのせた。
    「夏みかん、ですか?」
    「あけてごらん」
    「わぁ……」
     夏蜜柑の上部に入れられた切込みを開いて、彼女が嬉しそうな声をあげる。
    「蜜柑をくりぬいて、皮を器にしてね、中身は寒天で固めてあるんだ」
     匙で掬って、口元に運ぶと、彼女は自然にそのちいさな口を開けた。

    「わ。うそ、すごく美味しい……」
     驚いたような声をあげて、彼女は眼を瞠る。
    「ね、これ沖田さんも、食べてみて」
     僕から取り上げた匙で一口掬って、彼女は僕に差し出した。
    「えっと……」
     流石に、一瞬戸惑う。
    「あ……、ごめんなさい。風邪、感染っちゃうかな……」
    「いや、そうじゃなくてだね。……いいの?」
    「だって、買ってきてくれたの、沖田さんだし。こんな美味しいゼリー、独り占めできません」
    「くすっ……」

     そのあまりの無防備さに、思わず吹き出してしまった。
    「……わたし、何かおかしなこと、云いましたか? あ、ゼリーじゃなくて、寒天?」
    「いや、ごめん。じゃあ、ひとくちご相伴にあずかろうかな」
     するんと、喉越しよく入ってくる夏柑糖は、今日は格別の味がした。

     《ひいやりと喉を滑り落ちた柑橘の香りが、その奥で、どす黒い血の味に変わる。》

     ―――未夜、君、今、何をしたのか、本当にわかってないの?

     もう一度、匙を受け取って、君の口に運ぶ。
     しろい喉が、こくんと動く。
     熱で潤んだ瞳で、ゆるやかに、君が微笑む。

     ―――僕が、何をしたのか、わかる頃には、きっともう……


    「明日は、こっちを食べようね」
     もうひとつ、彼女を喜ばせようとして、橙糖珠の包みを取り出そうとした。
     
     ぽとりと、懐に持っていたものがいっしょに落ちる。

     ちいさな、あかい、風車。

    「沖田さん、それは……?」
    「これ? 『仕事中』に、相手が落として行ったんだ」

     今、確実に、彼女の表情が変わった。

    「残念ながら、逃げられたけどね。もう少しだったんだけどな」

     心当たりが、ありそうだね。

    「さぁ、そろそろ、布団に戻らないと」
     僕は、知らないふりをすることにした。

    「あの……、灯り……消さないと、ですよね…やっぱり……」
     暗がりがよほど怖かったのか、未夜は不安そうな顔をする。
    「大丈夫、いっしょにいてあげるよ。君が、眠るまで」
     
     だから、安心して朝までお眠り。
     咳にも熱にも効かないけれど、この薬はぐっすりと眠れるから……。






    未夜Side

     枕元に、ぽとりと以蔵の風車は落ちていて、わたしはそれをそっと拾った。
    「欲しいなら、あげるよ」
     お布団をかけてくれながら、沖田さんが云う。

     頭をなでてもらないながら、わたしは風車をくるくると回していた。

     以蔵……わたしのこと、探してくれてるんだ。
     以蔵だけじゃない。きっとみんなが……。

     それで、きっと危ない目に合って。
     沖田さんの帰りがこんなに遅くなったのは、以蔵やみんなを探してたから……。
     ……危ない目に合ってるのは、沖田さんも同じことで。

     帰らなくちゃ。明日こそ、きっと。
     
     だけど、沖田さんのひんやりした手は気持ちよくて。
     部屋の灯りが消えても、もうこわくなくて。
     わたしは、ゆっくりと目を閉じる。
     こころのどこかで、ずっとこうしていたいと思う。

     明日、少しでもよくなってればいいな……。

     

     眼が覚めると、もう外は明るくなっていた。
     沖田さんはもうお部屋にはいなかったけど、なんとなく、そろそろ襖が開きそうな気がする。

    「おはよう。具合、どう?」
     
     まるで、わたしの目が覚める時間がわかるみたい。
     朝ごはん代わりの葛湯と、お薬を持って、お部屋を訪ねてくれる。

     今日こそは、きちんと起き上がって、挨拶をしようと思ったのに、先に助け起こされてしまう。
     ……こんな調子で、ひとりで寺田屋まで、帰れるんだろうか。
     ううん。大丈夫。
     お手洗いのときなんかは、よろめきながらも、ひとりで動けてるんだから。
     気をしっかり持って、休みながら歩いて帰れば、きっと、大丈夫。

    「ほら、無理しないの」
     自分で動いて、お椀をとろうとして、それを取り上げられる
    「で、でも、いつまでも甘えてるわけにも……」
     と、いいつつ、口元にお匙がくると反射的に
    「あーん、」
     と、口を開けてしまう。
    「よしよし、いい子だね」
     
     昨日、部屋が暗いだけで、あんなにこわがってるところを見られちゃったからかな。
     なんだか、ものすごく子供扱いされてるような気がする……。

    「はい、薬飲んで」
     いつものように渡されて、飲もうとして気がついた。
     ……これ、眠くなるんだよね。
     寝ちゃったら、今日も帰れなくなっちゃう。

    「どうしたの? やっぱり薬は苦い? でも、飲まないと」
     心配してもらってるのに、申し訳ないけど、帰らないと……。
    「あの……、助けてもらってありがとうございました。そろそろ帰らないと、家の人が心配してると思うので」
    「その身体で……?」
    「あ、あの、だいぶよくなったし、それに……」
     なんだろう、お礼を云って、帰るだけのことなのに、なんだか言い出しにくい。

     どう云おうかと、まごまごしている間に、わたしのそばにあった風車を、沖田さんがひょいと摘み上げる。
    「これが、原因?」
     拾い上げた風車を、からからと回して、沖田さんは微笑んだ。

    「………!」

     気付かれてたんだ……。
     どうしよう。ここで、うかつなことは云えない。

    「ね。取引、しようか」
     悪戯っぽい笑顔を崩さないまま、沖田さんはわたしの目線までしゃがみ込む。
    「とりひ……き?」
    「君は、元気になるまで、ここでしっかり治すこと。その間、僕は、君が知ってそうなことは一切聞かない」
    「え?」
     それって、沖田さんには、なんの得にもならないんじゃ……?
    「君が、元気になって動けるようになったら、君は全力でここから逃げればいいよ。僕が見てないうちにね」

     ほんとに、そんなこと、出来るんだろうか……
    「で、でも、沖田さん、困るんじゃ……コホッ…コン・・・コン」
    「ほら、どっちにしろ、動けないでしょ、君。どこまで帰るのかしらないけど、隣ってわけじゃないだろうし」
     こんな話をしてる間も、額に手を当ててくれる沖田さんは、いつもどおり優しくて。
    「ほら、こんなに熱がある娘さんを、放り出せないでしょ」
     まだ考えがまとまらないうちに、お布団に押し込まれる。

    「それとも、僕が送って行こうか? 『君の世話になってるお宅』まで」
     一瞬だけ、沖田さんの眼が、寒気のするほど冷たく光った。
    「もちろん、その場合……わかるよ、ね?」
    「……お世話に、ならせてください……」
     震えながら呟くと、いつものやさしい笑顔がそこにあった。

    「病人は、薬を飲んで、布団に苔生やしてろってね。僕もよく云われますよ」
     ぱふんと、掛け布団をかけられて、以蔵の風車を渡される。
     以蔵たちが危険なことに変わりはないけど、そうするしか、ないんだろうか。

     結局、渡された薬を飲んで、だんだん意識が遠くなる。

     ここにいなくちゃいけないのなら、お願い。はやく帰って、きて……ね。
     この部屋で、ひとりきりは、とても怖いの……。


    《続く》
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